筑後守 について

過去の著書 ○もっと知りたい! 長宗我部元親 ○戦国武将の意外な関係 ○「戦国合戦」 意外・驚きエピソード ○大坂の陣・なるほど人物事典

灯明銭の徴収を正式に許可します(防府天満宮文書の毛利隆元書状)

・原文
其方手前灯明銭之事、彼牢人衆賄賂付而常灯闕如之由無勿躰候、然間灯明銭之事、令免許候、以其如前々常灯堅固可相調事肝要候、猶宮内少輔殿可被仰旨候、恐々謹言、
十二月廿三日 隆元
浄林坊

・意訳
 浄林坊が収入としている灯明銭(灯明料。灯明は神仏に供える灯火のことで、それを名目とした寺の収入源の一つ)のことですが、例の牢人衆が賄賂を取っているため、常灯(神仏の前にいつも点灯しておく火)が途絶えるようなことがあっては残念です。
 ついては灯明銭のことですが、正式に徴収を許可します。その許可で前と同じく常灯を守っていく体制をしっかりと整えることが大事です。なお詳しいことは宮内少輔殿が話されます。

・感想
 意味が捉えづらかったです。非公式に民衆などから徴収していた灯明銭を毛利家は常灯のため黙認していたが、牢人衆が浄林坊に対してみかじめ料のような金銭を取っているため寺の経営が苦しくなった。そこで隆元が灯明銭を正式に許可したのでしょうか。
 そもそも牢人衆がいて困らせているなら、毛利家が治安維持のため捕縛などをすれば良いと思ったのですが、それをすると支配の期間が短い周防で一揆が起こるため躊躇していたのでしょうか。
 とにかく疑問がたくさん残った文書でした。

(防府天満宮)
防府天満宮

家督を譲っても役目は果たせ(防府天満宮文書の毛利輝元書状)

・原文
防府天満宮祭礼之儀、来月十五日相当之由候、就其大行事役之儀、対藤井木工助元直以社法申付之処、女子譲之事候条、所懃仕間敷之由申候欤、太以不可然候、名字家督存知之上者、早々可相勤之由堅可申付候、猶従各所可申候、恐々謹言、
天止六年九月三日 輝元
市川伊豆守経好殿
黒川三河守著保殿
国司対馬守就信殿

・意訳
 防府天満宮の祭礼のことですが、来月十五日に十月会があります。それについて大行事役を藤井木工助元直に社法(神社の決まり)に沿って命じたところ、娘に譲ったので務めるのが難しいと言ってきたのでしょうか。非常にけしからんことです。名字や家督を譲ったことを(毛利家が)知った以上は、(奉行の3人が)早く務めさせるよう命じなさい。なお各方面からも指示させます。

・感想
 大行事役が何のことか分かりませんでした。辞書を引くと「大行事は仏語。大法会の際、道場の設備や法式儀則など万般にわたって法会を指揮する僧」とありますが、元直が僧侶ではなさそうなので、行事を仕切る総監督のような意味でしょう。
 輝元が奉行ら3人に対して「早く務めさせるよう命じろ」と言っていますが
1.家督を譲った娘が経験不足で出来ないのは関係ないから藤井家で役目を行うように
2.家督を譲っても元直に役目を果たせと命じている
 のどちらか判断がつきませんでした。自分は「名字家督存知の上は」→「家督などを譲ったことを毛利家が把握した以上は(そんなこと関係なしに)元直に役目を果たさせろ」と解釈しました。
 「太以」が「はなはだもって」というのが一番最初に出てきた時、読めなかったです。今は見慣れてますけど、現代で使わないので・・・。

(防府天満宮)
防府天満宮

毛利隆元、連絡がないので怒る!(防府天満宮文書の毛利隆元書状)

・原文
近日不申述候、慮外候、仍先日承候御車之儀、定而漸相調可申候哉、肝要候、来十月会ニハはたと如往古可被遂其節事可為珎(珍)重候、尚此者可申候、恐々謹言、
五月七日 隆元
大専坊御同宿中

・意訳
(防府天満宮の別当寺・大専坊に対して)最近は報告がありません。もっての他です。ついては先日聞いた御車(祭礼用の台車か山車)の件ですが、きっとどうにか準備ができているのでしょうね。これは重要なことです。来る十月会(十月祭)には昔からの通りに祭事を実行できることが珍重(目出度いことか大切なことのどちらか)です。なお詳しいことは使者が伝えます。

・感想
 おそらくこの前に、大専坊から毛利家に対して御車の準備ができないため、税の免除か金銭的援助を求める相談があったのでしょう。たとえ特別な措置を求めていなくても祭礼が行えないのは防府天満宮や毛利家にとって一大事です。そのため、大専坊が御車の準備状況を知らせていたにも関わらず、算段がついて安心したのか報告を怠り隆元が怒ったようです。
 「きっとどうにか準備ができているのでしょうね」という言い回しには、隆元の皮肉交じりの嫌味が感じられます。「報告がないということは、順調に準備は進んでいるだろうな、ああ?」というような。
 領国経営の大変さが伝わってくる書状でした。

・追記
 専門の方から「近日不申述候、慮外候」は「(隆元が)最近、連絡をしていなくて申し訳ありません」という意味でしょう、という指摘をいただきました。
 そちらの方が書状の流れが自然ですので、その意訳が正しいと思います。失礼しました。

(防府天満宮)
防府天満宮