「長宗我部元親・盛親(平井上総 著)」

 久々に長宗我部関係の本を購入した。タイトルは「長宗我部元親・盛親 ~四国一篇に切随へ、恣に威勢を振ふ~(平井上総 著)」。平井さんは長宗我部関係の論文などをいくつも書かれておりファンの間では知られているが、概説書を書かれるのは初めて(のはず)。

 この本の一番の特徴は通説を否定している箇所も含めて候文が全く出て来ないことだ。候文が出てきただけで「難しそう・・・」と思って読むのを諦める方もいる(自分も昔はそうだった)。そういった方にも読んでもらうようにする配慮だろう。

 他に感じたことは
・長宗我部に関する一次史料が少ないため、その中で実情を明らかにしようと苦労して書いておられるのが伝わる。
・香川親和の実名が不明で通称の五郎次郎しか確実な史料に出て来ないのを初めて知った。
・論文と重複する部分があるので初見の内容ではない箇所が多かったが、概略を読み直す形になり良かった。
・後書きにもあるが、盛親を駄目息子と思っている方がいるので、そういうイメージを持っている方は読めば印象が変わると思う。
 と言ったところか。

 結論としては長宗我部元親・盛親に関しての最新の説を手っ取り早く知ることのできる良書。これから長宗我部を本格的に知りたいと思っている方に是非読んでもらいたい。

長宗我部元親の像

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知る権利か、人権か

 先日、ある図書館に行って当地の市誌を見ようとしたら棚に無い。職員に尋ねたところ
「これは書庫にあるので、閲覧許可書に記入して下さい」
 地元の市誌を読むのに閲覧の許可? しかも閉架から出すのに名前だけじゃなく住所や電話番号まで…。おかしいと思いながら記入して提出すると本が出てきた。
 市誌に一通り目を通して必要な箇所を複写申請書に記入すると
「申し訳ありませんが、この本の一部は人権を侵害する記述があるため該当ページはコピーできません」
 はぁ?と思ったところに目に入ったのが、職員が確認のため使っていたのが人権侵害図書一覧(はっきりした名前はなかったと思う)で、そこにあったのは全て県内の市町村誌だった。

 ちなみに今回、館内の検閲に引っかかって人権を侵害すると判断されたのは下記の内容。
『元旦、尼子経久は家来や鉢屋衆(芸人の集団。当時は賤民だった)と共に月山富田城を奪い返した』
 一覧を見た限り、『鉢屋衆』が問題らしい。まあこの逸話は事実とは異なると言われているし必要な部分では無かったが、問題はそこではない。自分が人権問題に疎いせいなのかしれないが、鉢屋衆の記述で誰の人権を侵害しているのか分からない。

 ここの図書館は人権問題に熱心らしく、ネットで検索したところ8年前に『住民から指摘があったため県内の公立図書館に地元の市誌の2冊を所蔵している場合、当該ページを切り取って市に送付するよう求めていた』らしい(のちに県内の図書館から「勝手に改変できない」と拒否されたようだが)。
 そんなことで他の利用者に制限をかけてもよいのか…。図書館の自由に関する宣言には反しないのか…。
 コピー後に職員から
「納得できないのでしたら、今日は館長が休みなので後日電話で説明させましょうか」
 と言われたが断った。話したところで押し問答になって時間が無駄になるだけだし別の図書館でコピーすればいいだけなので。

 図書館戦争のような話だが、まさか自分が現実世界で当事者になるとは思っていなかったため備忘録として書きました。

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毛利秀元捨遺譚―元就の再来―

 山口県にお住まいの神崎廉さんから「毛利秀元捨遺譚―元就の再来―」を拝受した。

毛利秀元捨遺譚

 著者の田中洋一さんは秀元が治めた下関市にお勤めの方で、自費出版だそうだ。今年は銅像も出来て盛り上がっているらしい。
 この本で秀元の生涯が分かるのはもちろんだが、関ヶ原後の毛利家の混乱や家臣同士の不和などが知られて興味深い一冊だった。

 気になったのが関ヶ原で秀元が吉川広家の和平交渉を知っていた可能性があるのに大坂に戻ってから徹底交戦を訴えたと書いてあること。「知っていた」というのは推測で「徹底交戦」は(軍記物か史料か知らないが)記録にあるから、文章がそういう流れになるのは仕方が無いか…。
 あと、重箱の隅を突くようだが、P55の三行目に「防長絵図を前にした正純は」とあるが、姓の本多が抜けていると思う…。以前に正純の記載も無いし。

 揚げ足取りのようなことを書いてしまいましたが、文字も大きく文章も読みやすいので秀元の伝記としては良い本です。
 購入方法は通販は無く、くまざわ書店での店舗販売のみのようです。