藤堂家家臣たちの覚悟

 ある時、藤堂良勝藤堂高吉藤堂氏勝藤堂良重藤堂高刑とその他同僚8〜9人が酒宴をしていた。数時間ほど経ったあと、良勝が皆に尋ねた。
「今度の大坂の陣で出陣となったなら一番に討ち死にしようと思っている。どう思う?」
「改めて言うほどのことではない。戦場に出るのに誰が命を惜しむのか。苦戦したなら誰もが討ち死にするだろう」
 そこにいた者達は一様そう答えた。
「私は勝負うんぬんを言っているのではない。敵と見たら突っ込んで討ち死にするつもりだ」
 良勝が自分の決意を話すと、氏勝は頭を振った。
「それは不忠というものだ。一手の大将が理由なく討ち死にすれば軍全体が敗北するのは間違いない。愚かな話しだ。どうしてそんなことを思ったのか」

「日頃みんなが『家中で何かあった時は渡辺了ただ一人のように思われており、他の者はいてもいないようなものだ』と憤っていたが、いつのころからか忘れてしまったようだ。だから今度、そうではないことを証明するために討ち死しよう。その契約に杯を交わそうではないか」
 良勝は笑いながら答え、氏勝に杯を差し出した。氏勝は「珍しい杯だ」と受け取り、皆も順々に受け取った。
 その後、大坂夏の陣が起きた際、八尾の戦いでその場にいた全員は残らず討ち死にをした。(『難波戦記』)

藤堂家臣七十一士の墓
八尾市本町5−8−1の常光寺にある藤堂家臣七十一士の墓

管理人・・・その後の言葉は『無残なことだ』となっています。ちなみに実際は藤堂高吉だけは生き残っています。

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