十六島(うっぷるい)の由来について

 島根県出雲市に十六島(うっぷるい)という地名がある。

(島根県出雲市十六島町の場所)

(島根県出雲市十六島町と十六島港)
十六島

 出雲地方では正月の雑煮に使われる十六島海苔で有名だが、県外の人間は絶対に読めない難読地名である。なぜ「うっぷるい」と読むのか簡単に調べてみた。

・十六善神説
 「古来からうっぷるいと呼んでいたが漢字が定まっていなかった。ある時、十六善神(じゅうろくぜんじん。般若経およびその経の受持者を守護する夜叉大将一六体をいう。本尊として釈迦と共に十二神将および四大天王をさすとされるが、実際には異説があり一定しない。大般若会の際にまつる)が経島に来て護摩行の後、地元の者に地名を聞くと「うっぷるい」と答えたことから、「自分の名前に島を付けて「十六島」と書くように」と言ったという。(「懐橘談」「雲陽誌」)

・海苔の名前説
 もともと海苔が十六島と呼ばれていたが、それが地名になったという。なぜ十六島で「うっぷるい」なのかは記載が無い。(「十六島名称考」)

・島の数説
 雲手島・京島など一六の島があったことから十六島と呼ばれるようになったというが、こちらも読み方については記載が無い。(「雲陽誌」)

・アイヌ語説
 日本海貿易では十六島港が風待ちなどに利用された。アイヌ語で「ウ」は湯、「パア」は蒸気、「ルイ」は濃い、という意味から、蒸気の多い土地=温泉地という意味になるという解釈だが、近くに温泉地が存在しない。

・打ち振り説
 少彦名命が当地で海苔を獲った際、海水に何度も打ち振るったことから「打ち振り」が訛って「うっぷるい」になったという。

・朝鮮語説
 当地に朝鮮人が漂着した際、巨大な岩を見て「ウルピロイ(巨大な岩という意味らしい)」と呼んだことから、江戸時代(?)に十六の島を「うっぷるい」と呼ぶようにしたという。本当に朝鮮半島で巨大な岩をウルピロイと読んでいたのか怪しい。

・古代朝鮮語
 古代朝鮮語では「ウツ」が上や頂き、「フル」が集落や岬、という意味がある。それらを合わせると「岬の突き出たところ」「集落の一番上」という意味ではないかという。他にも古代朝鮮語での考察がいくつかなされている。

 どれも決め手に欠け矛盾のある説もある。ちなみに当地には南北朝時代から戦国時代にかけて十六島氏がおり塩冶氏や尼子氏に仕えたという。応永6(1399)年が十六島の初見で、戦国時代には毛利元就の書状の中に「おつふるい」という地名が出てくる。

○参考文献など
・出雲北浜誌
・島根県の地名
・山陰文化研究紀要 第16号「地名“ウップルイ”の由来についての一考察」

島根編 注文書


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