戦国武将と高野山奥之院 石塔の銘文を読む

 高野町教育委員会より「大名調査委員」を委嘱されてる木下浩良さんが、高野山奥之院を何年にも渡って調査された成果を本にされたもの。標注が立っているものも紹介されていますが、ほとんどが銘文から誰の石塔かを調べられてます。
 小早川隆景、吉川元春、津軽為信、南部利直、前田利家、浅井長政…、と二度ほど行ったことがある自分も知らなかったものが大半でした。
 奥の院に戦国武将の供養塔(逆修墓)を参りに行かれた方は多いでしょう。そこで「この武将の墓はないのか…」「○○家墓所と一括りにされているけど自分の好きな武将の墓はどれだろう」という体験をした方もまた多いと思います。そういう方に読んで欲しい本です。地図も載っているので次回の奥の院参りの際に役立つでしょう。
 まだ未調査の区域もあるため載っていない武将もいますが、続編も出る予定だということなのでそちらに載ることを期待しましょう。私としては香宗我部親泰しか分かっていない長宗我部一族のお墓が見つかることを願っています。

(著者の木下さんの地元・柳川を治めていた立花宗茂の五輪塔。一番思い入れがあるとのことで載せてみました)

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長宗我部元親と四国(人をあるく)

 ようやく読み終えました。内容は大きく分けると、元親のイメージ、生涯、四国侵略戦、史跡の四項目があります。今までの元親関係の本とは違い近年の説を取り入れており、元親の四国統一や一領具足制度の否定、元親の他国への侵略の手段などが分かりやすく記載されています。
 一般書なので新説が概略という形で載っているため、各説を詳しく知りたい方は記載してある参考文献にあたるといいでしょう。
 「長宗我部氏に多少は興味があるけど詳しいことは知らない」という方にはお勧めの一冊です。

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四国遍路―さまざまな祈りの世界

 私は長宗我部が好きで何度も四国に行っているため、段々と行きたいところが減って来た。そこで四国と言えば遍路ということで、最近は四国霊場八十八ヶ所の寺に長宗我部とは関係が無くても寄っている。
 しかし何も知らないのは失礼だと思い何冊か遍路に関する本を借りたが、ほとんどがお寺の紹介や作法もしくは自身の体験談に関するものばかり。そんな中で遍路の形成や現在の歩き遍路ブームなど俯瞰的な視点からまとめた著書が「四国遍路―さまざまな祈りの世界(出版社: 吉川弘文館、著:星野英紀・浅川泰宏)」である。
 モータリゼーションによる遍路の劇的な変化、歩き遍路への回帰、信仰のための巡礼をしている「おへんろさん」と貧困のために四国を廻っているため忌み嫌われる「へんど」の違い、など他の遍路本では取り上げられない内容が載っている。著者の一人が徳島県出身のためか徳島と高知に関する事例が多かった。
 特に興味深かったのが天保の大飢饉で接待を求め四国に渡る人達と、土佐藩の遍路に対する規制である。江戸時代の遍路に対する当時の人の考え方が多少なりとも理解できた気がする。
 遍路そのものを知りたいと思っている方には良書だと思う。

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