常灯明料は六倍にするように毛利輝元様が仰っています(防府天満宮文書の毛利輝元袖判同氏奉行人連署奉書写)

・原文
松崎(欠字)天満宮常灯明料之事、近年以四和利之勘合、被相渡之由、太以不可然候、所詮如前以六和利之算用、対乗林坊可有勘渡之由候、於自余之坊中ハ、以六和利有勘渡之由ニ候、右同前ニ被(欠字)仰付之通ニ候間、可被得其意之由、可申旨候、恐々謹言、
永禄八年六月三日 粟屋掃部助元真
         粟屋内敵丞元種
         国司右京亮元武
         竺雲恵心
国司雅楽之允就信殿
井上善兵衛元直殿
黒川三河守著保殿

・読み下し
松崎(欠字)天満宮常灯明料の事、近年四和利をもっての勘合、相渡されの由、太だ以って然るべからず候、所詮前の如く六和利をもって算用、乗林坊に対し勘渡あるべくの由候、自余の坊中においては、六和利を以って勘渡ありの由に候、右同前に(欠字)仰せ付けられの通りに候間、其の意を得られるべくの由、申すべく旨候、恐々謹言、

・意訳
防府天満宮(松崎天満宮)の常灯明料が、近年は(基準額の)四倍で計算して納められているのは、非常にけしからんことです。どのようにしても前と同じように(基準額の)六倍で計算して、防府天満宮の別当寺の乗林坊に納めなさい。他の別当寺には六倍で納められているようです。
右で述べたように毛利輝元様が同様の六倍で納めさせるように命じておられるので、そのことを心得るよう伝えておきます。恐々謹言

・感想
 常灯明料ですが、灯明は神仏に供える灯火のことで、それを名目とした寺社の収入源の一つです。「常」が付いているので昼夜問わず灯火していたのでしょう。
 最初、和利は現在の「割」のことだと思っていましたが「倍」のことだそうです。基準値に対して何倍の金額で払えということで、乗林坊には理由は不明ですが四倍になっていたため毛利家に訴えたらしく、他と同じように六倍にするよう輝元の命令が出ています。
 なぜ何倍かという話になるかというと、昔から決められていた金額があり、物価や貨幣価値の変動などに対応するため、過去の金額を基準としてその時の金額で何倍を払うかを決めるというやり方だったそうです。
 同じ防府天満宮の永禄十三年の文書に「六貫文 古銭也 定灯料也 参拾六貫文 六和利銭也」とあり、古銭すなわち昔だと6貫文だったが、それを永禄十三年の貨幣価値で換算すると6倍の6×6=36貫文になるため、それを定灯料として納めなさいという意味になります。詳しいことを知りたい方は下記の参考文献をご覧下さい。

 私は奉書を意訳するのが非常に苦手です。主人(毛利輝元)、奉行人(粟屋元真ら)、宛先(国司就信ら)、当事者(乗林坊)の誰に対して書いているのか毎回分からなくなります。

※専門の方に参考文献を教えていただき修正しました。

参考文献:毛利氏領国における基準銭と流通銭

(防府天満宮)
防府天満宮


大内義隆様が来られるので畳を張り替えておけよ(防府天満宮文書の吉見弘成書状)

・原文
就(欠字)御出府(欠字)御座所御畳八帖面替之事、被仰付候之条、道具以下相調、畳差四郎左衛門申付進之候、能々可被申付候、
然者前之面御次之広間御畳損候在所へ被取替、無見苦之様可被申付候、
(欠字)御出府之時者彼広間御会所に候条如此候、何茂可然様可有裁判候、四郎左衛門事、御用過候者、則帰参之儀可被申付候、恐々謹言、
(天文年間)十一月十日 弘成
大専坊

・読み下し
(欠字)御出府(欠字)御座所御畳八帖面替えの事について、仰せ付つけられ候の条、道具以下相調え、畳差し四郎左衛門申し付けこれを進め候、よくよく申し付つけられるべく候、
しからば前の面御次の広間御畳損候在所へ取替えられ、見苦しきなきの様申し付けられるべく候、
(欠字)御出府の時は、かの広間御会所に候条このごとく候、何もしかるべく様裁判あるべく候、四郎左衛門のこと、御用過み候はば、すなわち帰参の儀申し付けられるべく候、
恐々謹言、

・意訳
 大内義隆様が本拠地の山口を出立され、滞在される際の建物(大専坊?)の畳八帖の張替について(義隆もしくは重臣から)大専坊に命じられました。ですので、大専坊が道具などを準備して畳職人の四郎左衛門に命じて作業を進めなさい。念を入れて指示してください。
 それで御座所の前と次の広間で畳が傷んでいるところは張り替えて、見苦しくないように四郎左衛門に命じて作業させてください。
 義隆様が出立の際はその広間は会所として使用するため、見苦しい箇所がないようにしておく必要があります。一切のことは良いように(義隆もしくは重臣から)判断があります。四郎左衛門については用が済んだら(作業が全部終わったら)、直ぐに帰るように命じてください。
恐々謹言

・感想
 偉い人が少し滞在するだけで畳を張り替えないといけないとは、と思いましたが、今でも要人が来るのに古い畳のままってことはないでしょうから同じですね。
 「前之面」ですが、前の間ではなく畳の表面だけを補修するという意味と迷っています。

(防府天満宮)
防府天満宮


灯明銭の徴収を正式に許可します(防府天満宮文書の毛利隆元書状)

・原文
其方手前灯明銭之事、彼牢人衆賄賂付而常灯闕如之由無勿躰候、然間灯明銭之事、令免許候、以其如前々常灯堅固可相調事肝要候、猶宮内少輔殿可被仰旨候、恐々謹言、
十二月廿三日 隆元
浄林坊

・意訳
 浄林坊が収入としている灯明銭(灯明料。灯明は神仏に供える灯火のことで、それを名目とした寺の収入源の一つ)のことですが、例の牢人衆が賄賂を取っているため、常灯(神仏の前にいつも点灯しておく火)が途絶えるようなことがあっては残念です。
 ついては灯明銭のことですが、正式に徴収を許可します。その許可で前と同じく常灯を守っていく体制をしっかりと整えることが大事です。なお詳しいことは宮内少輔殿が話されます。

・感想
 意味が捉えづらかったです。非公式に民衆などから徴収していた灯明銭を毛利家は常灯のため黙認していたが、牢人衆が浄林坊に対してみかじめ料のような金銭を取っているため寺の経営が苦しくなった。そこで隆元が灯明銭を正式に許可したのでしょうか。
 そもそも牢人衆がいて困らせているなら、毛利家が治安維持のため捕縛などをすれば良いと思ったのですが、それをすると支配の期間が短い周防で一揆が起こるため躊躇していたのでしょうか。
 とにかく疑問がたくさん残った文書でした。

(防府天満宮)
防府天満宮