覚悟の二人

 大坂夏の陣の際、本多忠朝は討ち死の覚悟を決めて出陣した。勢多の辺りに来た時、小高い丘の上に渋帷子と破れた編み笠を着て、従者3人を連れた怪しい男が立っていた。男は忠朝を確認すると編み笠を脱ぎすて
「自分は保科正貞という者です」
 と名乗った。正貞は保科正光の弟だったが、兄の勘気を蒙り、忍んでここまで来ていたのだ。そして忠朝にあることを依頼した。
「陣場を借りたい」
 忠朝は馬から降りて正貞と対面。
「簡単なことですが、いろんな事情があるので、他の陣場を借りてください」
 しかし正貞は諦めず何度も頼み込んだ。
「あなたの覚悟を知っているからこそ陣所を借りたい」
 忠朝は断りきれず、足軽10人と武具や鞍を添えて渡している。(『難波戦記』)

本多忠朝の墓
大阪市天王寺区逢阪2丁目8−69の一心寺にある本多忠朝の墓

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