上下の隔たり

 天王寺・岡山での最終決戦で戦いに終わりが見えた頃、徳川家康
「もはや勝ちは決まったので身の安全を第一に考えるのが良かろう」
 と周りに言いながら笑った。そこに安藤直次が来て下馬し合戦の状況を報告した後、坊主衆に向かって
「喉が渇いたので一杯飲みたい」
 と頼んだ。しかし坊主衆は飲み物を渡すのを躊躇。
「家康様のお茶碗の他に飲み物を入れるものがありませんので・・・」
「後で洗っておけば問題なかろう」
 直次は気にせず家康の茶碗を使って飲もうとした。このやり取りを横で聞いていた家康は坊主衆に
「直次が喉が渇いていると言っているのになぜ早く飲ませないのだ。このような時に上下の隔たりなどあるものか。うつけめが」
 と叱ったという。(『駿河土産、武辺雑談』)

管理人・・・家康のいうことはもっともなんですが、やっぱり坊主衆の立場としては遠慮しますよね。

UPDATE 2012年6月29日
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