血染めの初陣

 徳川義直の家臣に曽根某という家臣がいた。曽根某の16歳になる長男が大坂の陣で初陣となったため、曽根家に仕えている家人の一人を呼んだ。
「今度の初陣では私に代わって息子の面倒を見てくれ。戦場でもそれなりの働きが出来るようによろしく頼む」
「承知しました。お気遣いは無用です」
 家人は長男に付き従って出陣した。そして実戦で、これはと思う敵を見つけて
「あの敵が良いかと存じます。槍をつけてください」
 と長男に上申し討ち取らせ首を獲らせた。すると家人はその首の切り口を長男の顔につけ、死体の血を甲冑に塗って、最後に首を馬の鞍にくくりつけて進んだ。
 長男の馬も鎧も白色だったため、その姿はすさまじく見た者には立派な働きをしたように映った。それを見て褒めない者はいなかったため、長男も勇気が出てきてさらに手柄を立てている。この行動を曽根某は賞し、自分の領地600石の内、100石を家人に与えた。(『明良洪範』)

名古屋城
名古屋市中区本丸にある尾張徳川家の居城・名古屋城

UPDATE 2005年3月30日
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