武功ある者

 大坂の陣(おそらく夏)で、井伊直孝の軍勢が徳川家康の脇を通った。若武者達の見事な赤具足の中に、十騎ほど古い鎧を着て青い木綿羽織を打ち掛けた年配の者達がいた。その見苦しい様を見た家康が
「あの十騎の者はおそらく武田家の旧臣であろう。尋ねて来い」
 と命じた。
「確かに甲州者です」
 御歩衆が確認し家康に報告した。家康は近くにいた者達に
「あれを見ろ。あの光り輝く若者共は何も知らぬ奴らだ。それに対して騎乗している年寄り共は武功のある者たちだ。物見の仕方も心得ているだろう。武功ある者は見ていて気分がいい。光り輝く若武者の奴らは何も知らず仏彩色にしたようだ。見たくも無い」
 と話したという。(『小早川式部翁物語』)

UPDATE 2012年7月4日
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