敵か味方か?

 天王寺・岡山での最終決戦で徳川軍が勝利し軍を進めていると、大坂城の方面で兵が群がっていた。そこで徳川家康は「あれは敵か味方か」と尋ねたが、誰も分かる者がいなかった。
 植村新六郎という徒士頭が「私が見てきます」と言い、植村主繕正を招いてなにやら耳打ちして馬に乗り群集の中に入った。しばらくして主繕正が家康に報告。
「あそこに群がっているのは味方です。遠慮なく駕籠を進めてください」
「なんでお前は敵味方の区別がついたのだ」
「先ほど新六郎が私に向かって言うには『敵との距離が余りに近いので、今から戻って敵か味方かを報告していては遅くなってしまう。私が馬を乗り返したら味方だからそれを報告してくれ』と馬に乗って行ったからです」
「新六郎は智恵と勇気と忠義がある」
 家康は新六郎を激賞している。(『難波戦記』)

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