松明

 大坂夏の陣で水野勝成は大和口の大将に命じられ、堀直寄・松倉重政らと共に大和口に向かった。5月5日の夜、勝成は松明が多く見えたため「備えを怠るな」と諸将に伝えた。
「これは経験豊富な勝成とも思えない発言だ。進軍してくる敵が何で松明を多くともすのだ。敵ではないだろう」
 直寄が勝成の指示を批判していたところに、勝成の使者が来た。
「松明はすべて消えた。敵ではない」
 それを聞いた直寄は
「さては敵だ。何の考えもなく火をともしていたが、巧者がいて消させたのだろう」
 と推測した。果たして、それは後藤基次の隊だったという。(『常山紀談』)

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