祐夢先生の最後

 大坂落城後、捕えられた長宗我部盛親は京の町を引き回された。その時、町の人々が見物したが、その中に近江の浪人・米原九郎衛門の娘も人に連れられて見に来ていた。
 その盛親の顔を見たとき娘は驚いた。柳の厨子で親しくしていた寺子屋の先生・祐夢だったのだ。彼女は刑場を見ることに耐えられず、そのまま家に帰って泣いた。のちに米原九郎衛門は土佐の山内家に召抱えられ、娘も一緒に土佐に渡り長生きしたが、いつまでも懐かしい祐夢のことが忘れられず、人に祐夢のことを語る度に涙ぐんでいる。(『韓川筆話』)

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