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祈願
ある月、そこに行く途中、直之は若い衆にふと尋ねた。 「神前で何を祈るのか」 「武運長久(武運が長く続くこと)、悪事災難(悪い出来事)から逃れられるようにとお願いします」 それを聞いた直之は大笑いした。笑う理由が理解できない若い衆は直之に理由を聞いた。 「私はそれとまったく反対の考えだからだ」 「どういうことか」 それでも理解できない若い衆は再び尋ねた。そこで直之は自分の考えを教えた。 「私の願いというのは、この団右衛門という浪人を悪事災難の場所か珍事重要の庭に引き合わせてくださいというものだ。それらの願いをかなえてくれるようお願いするつもりだ」 「その本心はどういうことか」 「私は浪人の身分だから畳の上の奉公(デスクワーク)ではなかなか出世できない。悪事災難が起こる場所なら善しにつけ悪しきにつけ自分の行動次第だ。名をあげて出世のきっかけとするのだ」 と、直之は意気揚揚と語った。
「自分と同じく徳川軍に加わろう」 さすがに志摩は止めたが、直之は意見を変えない。 「徳川軍は人数が多く勝ってもたかがしれている。それに対して豊臣軍には有能な者が少なければ私のような者でも大将になれるかもしれない。それならどうなっても本望だ。止めてくれなくてもいい」 志摩はそれならと餞別を渡したが「私も前からお金を準備している。ここに来た際に預けた葛篭の中に用意してあるので気遣いは結構です」と餞別を返して水戸を発っている。(『桃渓雑誌』)
管理人・・・有名な話ですが、原文を見直して訳して自分なりの解釈で載せてみました。 |
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