逃げ延びる

 淀殿に仕えていたお菊は、山城忠久の娘と一緒に何とか大坂城を脱出し、知り合いだった京都の町人の家に逃げ込んだ。しかし大坂の落人ということで一泊もさせてもらえず、晒(さらして白くした木綿)をもらって家を出た。そこで織田左門の家を訪ねたが、ここでも屋敷の門が閉じられ入れてもらえなかった。
 そこでお菊は忠久の娘が左門の姪だったので
「ここにおられるのは姪御殿ですぞ。それでも入れてもらえないのでしょうか?」
と言うと、門が開き中に入れてもらうことができた。
「姪を助けていただき、ありがとうございました」
 左門から挨拶され丁寧にもてなされた。そこで二人は二階に4〜5日程隠れた後、龍子(松丸殿、秀吉の元側室)の元に行き彼女に仕えている。(『おきく物語』)

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