大口

 大坂冬の陣で徳川軍によって次々と大坂城へと続く橋が焼き落とされた。だが船場の橋は焼くかどうするかの判断に迷ったため、徳川軍は又一という者に浪人の川野権右衛門を付けて偵察のため船場に向かわせた。二人は城内から鉄砲を打ち掛けられるのも気にせず偵察を終えて帰ろうとすると、豊臣軍は鉄砲や矢を打つのを止めて敵の勇気を称えた。
 そして二人が状況を報告すると、船場の橋と高麗橋を焼いて大坂城を兵糧攻めにしてやろうということになった。そこで兵が焼き落とすのを使番に見届けさせようということになったが、又一は徳川家康の前で余計なことを口にした。
「使番は誰もが臆病者なので近くに寄ったら鉄砲の弾に当たってしまいます。ですから遠くから見届けさせるのが良いかと思います」
 又一が去った後、家康は「又一のあの大口では同僚と仲が悪いのももっともな話だ」と笑った。(『駿河土産・御撰大坂軍記』)

大阪城天守閣
大阪市中央区大阪城にある大阪城天守閣

UPDATE 2005年10月24日
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