強行軍

 大坂冬の陣で戦闘が始まる直前、徳川家康は先に上京して諸大名を待っていたが、徳川秀忠が到着しないため機嫌が良くなかった。そのことが御側衆より秀忠の耳に入ると「それなら急ぐぞ」と命じたが、大軍のため準備が整わないので、とりあえず自分と周りの者だけで急いで上京した。
 それを知った家康はまた怒り出した。
「秀忠は思慮が浅いことはなはだしい。武道のことに詳しくなくてどうやって国を治められるだろうか。秀忠が急いでいるのを怒っているのは歳を取ったからではない。豊臣軍は京都をそんなにすぐには攻められないだろう。急いで来て軍勢が疲れたら戦にならない。だから急がずに悠々と上洛することが分別ある行動だ。私が機嫌が良くないからと少人数で来るようでは国を治めるのに心もとない」(『老談記』)

徳川家康の像
静岡駅前にある徳川家康の像

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