重成の覚悟

 徳川家康木村重成の討死に感心していると、近臣が口を出した。
「重成の討死は、かねてから考えていた訳ではないようだ。その理由に月代を剃っていない」
「討死の志は月代を剃る剃らないではない。重成の兜を取り寄せて忍の緒(兜の鉢につけてあごのところで結ぶ紐)を見せろ」
 家康が近くの者に命じて兜を近臣に見せると、忍の緒を結んで端が切ってあった。
「これは再び帰らないとの志を表している。重成は討死する覚悟だったのだろう」
 家康の説明に皆は感嘆した。(『東武実談』)

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