弱弓

 藤堂高虎の家臣に吉田元直の弟子で玉置太郎助という者がいた。大坂夏の陣のある夜、藤堂家の陣所でキリキリと音がしたため、高虎が怪しんで太郎助に命じて、その方向に射させた。暗かったため、当たったかどうか分からないが音は止んだ。
 人々が不審に思って翌朝見に行くと、柳の枝が裂けた場所に風が吹いて音が鳴っていたところに、太郎助の矢が割れ目に当たって音を止めていた。
「暗闇で音だけに頼って射り当てるとは」
 太郎助の腕前を知った人々は褒め称えた。(『甲子夜話』)

管理人・・・太郎助は大坂の陣の最中、弓で7回の戦功があり、300石を与えられたそうです。その弓は黒塗栗色藤でわずか六歩ほどでしたが、金粉で銘が刻んであり敵7人を射倒した、というもので玉置家の宝となったそうです。

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