塙直之の妖怪退治

 塙直之が安芸広島にいた頃、福島正則の屋敷の便所に化け物が出て、便所に行こうとする者の尻を撫でてきて、その腕は毛むくじゃらで爪が長い、というのが噂になっていた。
 ある日の夜、直之は正則の屋敷に出かけ、皆と話している途中で便所に出かけた。そして直之が便所に入った時、何者かが便所の上の松の梢から飛び降りてきた。便所から覗いてみると鬼のような顔をした者がいたが直之は動ぜず睨み返した。するとその者は引っ込んだので直之が小便をしようとすると、下から手が出てきて尻を撫でた。怒った直之は手を掴もうとするが、すぐにひっこみ、屋根の上からその鬼がじっとこちらを見る。睨むとまたひっこみはしたが、またも尻を撫でてきた。
 これを何度も繰り返しているうちに、直之はやっと鬼の手を掴み便所の中に引きずり込んだ。そして組み合って遂には脇差で刺し殺した。よく見るとそれは大猿で、広島の者は「噂の妖怪はこれだったのか」と言い合い、それと共に直之の勇気を褒めた。(『古老物語』)

広島城
広島城

管理人・・・本当にあった話しかどうかは別として直之らしい話しですね。他の場所でも似たような話しがあるので、多分作り話だと思うのですが。

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