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勇士
城内より豊臣軍の一人が櫓に上がり大声で叫んだ。 「今、盾を捨てて逃げたのは旗の家紋を見るに間違いなく池田家の一族と見た。盾を取り返さなかったら末代までの恥になるぞ!」 豊臣軍は一同大笑いした。
池田忠雄は怒りに耐えかね口走った。その言葉を忠雄が言い切る前に、黒糸威の鎧と兜を着た仁王の出来損ないのような大男が、静かに歩いて城の近くまで行き、大きい眼(まなこ)を見開いた。そして鬼髭を撫でながら、大声で叫んだ。 「ただいま盾を取りに行こうとする者は、大した身分ではないが池田忠雄の家臣・川田八助と申す。幼少より山や川で狩りや漁を生業としていて頭はあまり良くはない。しかしこのような時に謀(はかりごと)によって死ぬのは勇士の道だ。盾を取って帰ることなど難しいことではない」 八助は走りよって鉄の盾3枚を軽々と小脇に抱え込み、城を尻目に睨んで引いた。その姿は仁王そのもののようで豊臣軍の兵達はこれを褒め称えた。そこに大野治房の家臣・小畑源右衛門という鉄砲の名手が 「たとえ中国の英雄が再来しても打ち倒してみせる」 と鉄砲を放ち、八助の推付(押付、鎧の背の上部で、綿上に続く所。もしくはその押付にあてた鉄板のこと)に命中。しかし八助は傷が浅かったため、何事もなかったように盾を持って本陣に戻った。(『難波戦記』) Copyright (C) 2003 Tikugogawa. |
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