老人の助言

 藤堂高虎の家臣・平佐牛之介は大坂冬の陣の際、伊賀の百姓を足軽にして連れていった。さて大坂に着き陣を構えていたところ、兵士達を油断させないために「敵が出るぞ」とのお触れがあり、そのため、兵士達は油断無く構えていた。
「さっきのお触れは油断させないためのはかりごとだ。そんなことをされなくても油断はしない」
 牛之介は強気な発言をしたが、足軽の中にいた老人が
「私も上のはかりごとだとは思いますが、先ほどまで注意して火縄銃に火をつけていた人達などは、事実を知れば油断してしまうでしょう」
 と忠告した。

 藤堂軍が大坂城近くを攻め寄せると、元々藤堂家の家臣だった能勢九朗右衛門という者が篭っており鉄砲を撃ってきた。牛之介は九朗右衛門と知人だったため、
「九朗右衛門をこちらに来るように招いてくる」
 陣地の外に出て矢を放てる場所に移動した。
「牛之介はまずいことをする」
 それを見た者が渋い顔をしたが、上記の老人は牛之介を庇った。
「いえ、平佐殿の行為は少しも困るようなことではないです。若い時はそのような伊達な振る舞いもされます。黙って見守りましょう」(『武功雑記』)

伊賀市
現在の伊賀市

管理人・・・能勢九朗右衛門というのは能勢宗兵衛の一族でしょうか。

UPDATE 2005年11月11日
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