好敵手

 加藤嘉明の家臣に川木五郎左衛門と黒川加兵衛という利口な侍がいた。二人は武士道の心がけが深く、同僚達も褒め称えられていた。そんな二人は互いを意識して
「何事にも一歩も譲らないぞ」
 と常々考えていた。
 大坂冬の陣が起きた時も二人は嘉明の息子・加藤明成に従い大坂に上った。陣の最中、加藤軍は淀川を越えることになった。それを聞いた二人は真っ先に駆け出して淀川に馬ごと飛び込み馬の顔を並べて泳いだが、岸の足場が悪くて上陸できずに人馬共に疲れて二人とも流されて溺れ死んでしまう。みんなは
「あっけない死に様だ」
 と残念がった。
 五郎左衛門には若い家臣の中に勇敢な者がおり、彼は国許を出る時、妻子に
「我が主人が出陣して再び帰ってくるような人とは思えない。そうなれば私も帰ることはあるまい」
 と言い置いて出たが、その通りに五郎左衛門が淀川に飛び込んだ際に、馬の尻尾に取り付いて一緒に溺れ死んだ。
 また、加兵衛は常に自分の馬に
「これほどにお前を私が大事にするのは、肝心な時に役に立つと思っているからだ。もしそうしてくれなかったら一緒に死んでも私を恨むなよ」
 と言っていたが、その通りにおぼれた時に水中で首を刀で二回刺したという。

UPDATE 2012年3月12日
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