勝手なことはやっちゃ駄目

 大坂冬の陣の時に寺沢広高の家臣達が敵情視察について話し合っていた。その場に元は小野木縫の家臣で今は足軽の頭をしている宮川右京という者がいた。右京は何も言わずに白昼に槍を持って視察に出かけた。豊臣軍は一人なので不思議に思って鉄砲を撃たずにそれを見ていた。
 右京は門の脇まで行って帰り「足数がこれだけあって行きと帰りで3つほど違っていた」などと報告していると、広高は「宮川殿」と慇懃に挨拶した後「その方は行きづらい場所に行き手柄と思われているだろうが、若い者達には変わっていると思われている。その方は物頭まで務めている身分ではないか。年を取ってたわけたことを言われる。もしまたこんなことをしたら切腹を申し付けるぞ」とたしなめている。
 だが広高の真意は『それほど変わっているとは思わないが、こういう勇士は軍法に背いてこのようなことをすることが多いので釘を刺しておこう』というものだった。(『山本日記』)

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